ザ本ブログ

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告白 / 町田 康

あの人は何も考えてない、とか、絡みづらいやつだなぁ。などと思った経験、誰にでもあると思います。本著はそんな人に疎ましく思われてるばかりの、チンピラの思考を追います。

 

とにかく本作は分厚い、長い。その中でとにかく彼の思考がツラツラと書き連ねられます。仕事もせず、博打と酒に溺れる日々。異性には興味津々なれど、何ら手を出せず、ケチな犯罪に手を染め、あっけない結末を迎えます。

 

こう書くと、全く読む価値が無さそうに思われますが、この本、とにかく読後感が切ないんです。なぜか。

バカで無知と思われてるばかりのチンピラですが、その思考は意外と論理的です。時には哲学的でさえある。異性にアタックする際に、周到に計算する計画性もある。

でも口をついて出る言葉は支離滅裂。無学ながら、かなり深い思索をしているのに、それを表す術を知らないんですね。相棒と呼べる人物に出会うも、相手は直感タイプの行動派なので、結局言葉で分かり合うことはない。

 

なまじ頭はいいけど、空回りした思考を持て余し、一度足りとも誰とも通じ合うことない人物の頭の中を、一冊で一生分覗き見た感じ。

活字中毒でなければ、オススメできません。でも読んだ人の感想は聞いてみたい一作。