ザ本ブログ

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フィッシャー・キング(1991年) / テリー・ギリアム

■ニューヨークで人気のラジオDJだったジャック。しかし放送で不用意な発言をした結果、リスナーが銃による無差別殺人事件を起こしてしまう。バーでの発砲で死者7人。責任を追及されたジャックは、落ちぶれてヒモ同然の生活を送る。そこで偶然出会ったのが元大学教授で現在はホームレスのパリー。彼はなんと、バーで殺害された女性の夫だった。妻を目の前で殺されたショックで精神を病んで、仕事を失ったパリー。彼に報いることが自分の贖罪になるのではとジャックは考え、パリーと行動を共にするのだった。■

 

心を病んだ、純粋なパリーの心象風景の描写に惹かれました。自分の好きな女性を駅の雑踏の中で追うとき、駅のフロアがダンスフロアのように描かれ、社交ダンスを踊る男女の間を縫っていきます。

 

思い出してはいけない過去がよぎるとき、馬に乗った赤い騎士が現れます。このように、作中に彼の見ている幻想が現実のようにたち現れてきます。

 

パリーは医者に、ショッキングな過去を思い出さないように言い渡されていました。しかし物語の最後に、ジャックの努力によってか、彼はほんの少しだけ過去を取り戻し、受け入れることができます。愛する女性の面影を…。

 

ハッピーエンドとは自分には思えませんでした。しかし大きなものを失い、ほんの少し取り戻す、そしてまた前を向き歩み出す。受け入れきれない苦難に直面した人に、少しだけ勇気を分けることができる。そんな作品だと感じました。