ザ本ブログ

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漁港の肉子ちゃん / 西加奈子

最初は少女趣味な内容かなーと、油断して読んでいたら、後半急加速を始め、あれよあれよと衝撃的な印象を残す展開となりました。

非常にオススメの作品です。

 

ひなびた漁港の肉屋に居候する母子。

太って不細工で、お世辞にも賢くはないが、人懐っこさとあっけらかんとした性格で周りの人を和ませる母親。美しく聡明だけれど、自分の感情に素直になれない娘。

単に少女の成長譚として、成立しそうな作品ですが、そこは西先生、かなりハードな内容をぶっこんできます。

 

ネタバレですが、性産業について。

少女の出自にに絡めた展開の中で、かなりリアルな性風俗の現場が描写されます。作中ではその善悪に触れるのではなく、そのような仕事の中でも逞しく生き抜く女性や、あるいはどうしようもなく流されて生きる女性がいることを淡々と描きます。そして望まれたものでなくても、性愛のもたらす奇跡についても。

 

女性である著者がどのような気持ちで性風俗の場面を表現しているのかは分かりません。しかしただ見たくないものを拒絶するだけでは、その中で生きる人全てを否定することになると考えているのではないでしょうか。

是非を問う前に、まずありのままを知ること。白黒の付けられないグレーの部分から、存外真実というものはたち現れてくるのかも知れません。