ザ本ブログ

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拳闘暗黒伝セスタス、拳奴死闘伝セスタス / 技来静也

古代ローマが舞台。主人公の少年拳奴セスタスが、拳闘試合で勝ち続けて自由を勝ち取れるかというストーリー。

 

セスタスはダメージを逃がす柔軟性と俊敏さを活かした正確な打撃、運動量が豊富など拳闘者としては異質の素材ではあるが、幼さや体格が華奢である故の非力さ、打たれ弱さという課題がある。また精神面もまだまだ脆い。

 

まぁ状況が過酷過ぎるんですがね(^^;。

 

雇い主にもよるが、拳奴の生活環境は劣悪だ。
当初のセスタスの雇い主はとりわけ酷く、拳奴は檻のような場所に入れられ、家畜のように食事を与えられていた。
また拳奴同士の練習試合に負けただけで、殺されるような場面も・・。勝っても焼き印入れられたり。
まあそれが拳奴の反乱に繋がったりもしちゃうんですがね。
本作品のメインを占めるのは、やはり格闘描写です!絵は一巻の一話目から文句なく上手い!分かりやすい!
だから、人にも安心しておすすめできるんですよね。「〇巻から段々絵が上手くなるから、そこまで我慢して読んで!」、
みたいなのがないから。

 

 

豊富な格闘知識に基づく格闘描写は、正に痛快ですね。一戦一戦にバリエーションとストーリーがあって、飽きさせることがない。
そしてこの作品を語る上で、絶対に欠かせないのが、セスタスの師匠<ヌミディアの拳狼>ことザファル先生の熱いお言葉です。
先生はタダ者ではなく、キャリアは短いものの、かつては最強の拳奴と言われた人なんですね。
しかし詳細は未だに語られてはいないものの、当時のパンクラティオン(総合格闘技)の王者、<アッティカの金獅子>ことデミトリアスと異種格闘技戦をした結果、ヒザを破壊されてしまい、拳闘者としてのザファルは死んでしまったわけです。
歩くのに補助器具を必要とする割に、たまにケンカをするとちょいちょい強いんですがね。

 

このザファルの拳闘知識、経験のおかげで、セスタスは辛くも生き残り、闘いの最中の先生の解説(ほとんどモノローグの心の声ですが)で、戦闘シーンの描写にも厚みが加わるのです。
セスタスは幼少の頃よりこのザファルに育てられ、生き延びるための拳闘を心身共に叩き込まれているわけですが、まずどうやら実の子どもではないようなんですね。
なぜザファルが自分の全てを懸けて、セスタスを守り生かそうとしているかは、タイトルが変わった第2部になった今でも、詳細には明かされていない・・。かれこれ10年以上気になってしょうがないし、涙無しには読めないエピソードが今後語られることでしょう。

 

ザファル先生だけでも10,000字は語れそうですが(最早ちょっとしたレポート)、他のキャラの魅力もハンパないんです!
闘技者として、セスタスのライバルとしての重要人物がデミトリアスの息子のルスカ。セスタスとは同年代。
デミトリアスの息子なので、当然総合格闘技を身に付けており、拳闘だけで戦うセスタスの壁として、幾度も立ちはだかります。父親は皇帝の親衛隊(衛帝隊)隊長のデミトリアスなので、身分には恵まれていますが、非情な父親のせいで、セスタスとはまた違った意味での過酷な運命を背負わされています。幼少期に皇帝の身代わりにされたりね。
もう一人の主人公と言っても過言ではないでしょう!

 

いい漫画って、主人公が二人いると思いません?一歩と宮田、ガッツとグリフィス、アッシュと英二、ユウとマサキ(ショウゴ)、信と政とかね。

 

他にも格闘キャラが軒並みカッコいいんです!やはり衛帝隊は人材豊富ですね。
ちょっとダークなキャラのマケドニアのソルレオン。格闘というよりかは暗殺術のエキスパートなので、裏で暗躍するシーンが多いのですが、マトモに戦っても最強説あり!
飛んでくる矢を素手でキャッチしたり、背中を殴って相手の心臓を止めちゃう無双っぷり。

 

中二ゴコロをくすぐりますよぉ。

 

そして<神速の住人>アドニス!本作には珍しい軽薄なチャラ男キャラですが、実力はピカイチ。
才能の権化で、対戦相手が触れることすらできぬ軽快な戦いっぷりは何度見ても爽快です。彼もまた、“優速”に頼るセスタスの強力なライバルですね。

 

そして忘れてはならないのが、影の主人公と言ってもいい皇帝ネロの存在です。
セスタス、ルスカと同年代。ローマの最高権力者であるからこそ命も狙われ、母との確執もあり、本来は芸術を愛する大人しい性分の少年としては、辛い出自となってます。最近になって、将来の<暴君ネロ>としての萌芽が出てきた感はありますね。

彼がいるからこそ、当作がただの格闘漫画でなく、当時のローマの文化や歴史を学ぶことのできる重厚な物語を成り立たせていると言えます。

 

最新のストーリーでは“ローマで一番強いヤツ”、を決める大会が催され、ますます熱い展開になってます。これまで戦った相手が集結したり、更に魅力的なキャラが現れたり!難しく読まなくても、純粋にアクションがめちゃカッコいいマンガです!