原美術館 / 争いや事故がもたらした、自然の楽園について考えてみる
品川から徒歩15分。現代美術を展示している、原美術館を訪ねてまいりました。特に理由はなかったのですが、時間があったらフランス人の美術史家のソフィーリチャードさんの著書「フランス人がときめいた、日本の美術館」に紹介されている施設は、一通り行ってみたいなぁと思ってまして。
・入り口はこんな感じ
今回の展示は
「The Nature Rules 自然国家:Dreaming of Earth Project」
どういうものかといいますと、1953年の朝鮮戦争戦争終了時に設定された軍事境界線は非武装地帯となっており、政治的・物理的に人間が立ち入れない地域になっている(300万個の地雷原)。皮肉なことにそれが生態系の保護につながり、この一帯は比類なき豊かな自然を育む大地となった。韓国人アーティスト・崔在銀(チェ ジェウン)は、「Dreaming of Earth Project(大地の夢プロジェクト)」と称し、この地の自然を継承していくための建築や自然のアーカイブを創る活動を発足した。この度の展示は、そのプロジェクトを可視化するものである。
プロジェクトの規模が凄いんですよね。元々あった軍事用トンネル内部を改装して、建築を行ったり。トンネルを地上まで垂直に掘り抜き、堀抜いた岩石は、ヘリで移送して付近の建物の基礎として利用する。鉄条網を溶かして、アート作品にしちゃうとか。資金源どうなってんだ。
今回の展示はアート作品を楽しむこともできますが、こんな凄まじい規模のプロジェクトが行われていることを知れただけでも得した気分になれる。ひたすらに感心したし、応援したいなと思いました。なにもできないけど笑。
非武装地帯の豊かな自然というワードでふと連想したのが、核で汚染されたはずのチェルノブイリ周辺の豊かな自然の映像。確かNHKのドキュメンタリーだったと思うんですが、この一帯も動物の楽園みたいになっちゃってるんですよね。動物達へのセシウムとかの影響が気になるところなんですが、寿命が短いと、少なくとも一個体への影響が出るまでに終わりを迎えてしまうのか。遺伝的な影響は今後調査が進められていくそうですが、自然のたくましさ、人間が住めなくなったことで皮肉にも保たれた豊かな生態系など、今回の展示にも関連するように思えるし、色々と考えさせられますね。
小規模な美術館ですが、品川という都心にありながら閑静な住宅街の一角で、木々に囲まれて非常に落ち着けます。展示によるかも知れないけど1,100円とリーズナブル。何より休日でも人が多すぎないのが良い。外の展示物の保存状態は、もう少し気を配った方が良いか。
中庭が見渡せるカフェの日替わりパスタも1,000円とお手頃で、丁寧に仕上げられたトマトソースの仄かな酸味が美味しゅうございました。
ちなみに、美術館には関係ないのですが、付近の御殿山庭園の人工の滝が地味に凄かった。雨あがりのせいか、かなりの水量。あと美術的に見ても、コレかなりカッコいい作品じゃない?
原美術館のすぐ近くなので、ぜひお立ち寄りしてみては(^.^)。
・御殿山庭園の滝。
・スゴい水量!
・下に降りると、浴びるようにマイナスイオンが。マイナスイオンって死語じゃないよね?