ザ本ブログ

読書をメインに。他、雑記などをアップしていきます。

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(原題:Extremely Loud & Incredibly Close)

9.11のテロで、父親を亡くした少年が主人公の映画。

中々不思議な話だ。父親の遺品の中から、何やら意味ありげな鍵を見つける。数少ない手がかりを便りに、少年は様々な人を訪ね、ついには鍵穴を見つけるに至る。しかし、その鍵の正体は、少年が求めていたものではなかった..。

ってな感じのお話。

 

少年はアスペルガーの診断を受けており、少々コミュ障。それが故の率直な物言いが、ハラハラもするが可愛い部分もあるんですがね。亡くなった父親は、そんな少年を“対等”な存在として接していたようだ。というか描写をみる限り、父親も子どもっぽい感じがするので、少年の“友達”になるのにさほど苦労はなかったのかも知れない。

対して母親は少年の性質を、気がかりなものとして捉えていたようだ。いじめの描写もあるし無理からぬこと。父母どちらが正解というわけではなく、役割分担といったところか。

しかしそこまで思い至らぬ少年にとっては、“友達”である父親を亡くしたことは、ことのほかダメージが大きい。大人として、少年を案ずる母親との関係性は、“分担”ができなくなったことで崩れつつあった。

 

鍵を巡る旅で、少年は父や母のこと、また、自分達を取り巻く人たちの思いを少しずつ知っていく。タイトルの「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」は、感覚過敏の少年にとっての“世界そのもの”なのではないか。ただでさえ感受性の鋭い少年を襲った、受け止めきれぬ悲劇。そんな少年を父親の残した思いと母親の深い眼差し、そして人々の思いやりが成長させていく。

理不尽な事故に苦しむ人。社会とのズレに戸惑う人。そんな人たちのために、手向けられた作品なのかなと思いました。