ザ本ブログ

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ミリオンダラーベイビー / 主演・監督 クリント・イーストウッド

このテーマには、自分はいつも結論が出せないですねー・・。

 

本作では、さして若くもない女性がボクシングに出会い、良きトレーナー(フランキー・ダン)の下で、華やかな成功を収める。
が、王座を狙う試合で、チャンピオンに悪質ない反則を受け、再起不能に。しかも全身麻痺で寝たきり状態に、なってしまう。

 

ボクサーとしての過程は、本作にとっていわば前座に過ぎず、主題はここから。
若くして寝たきりになり、ボクシングどころか、日常生活を送れなくなったマギー。
片足を壊死して切り落とすなど、病状は悪化の一途だが、意識ははっきりしている。
彼女は死を望むようになる。それはこうした病状を患った患者のは当たり前の反応なのかも知れないが・・。

 

彼女の場合は、人生に未練が無さ過ぎた。家庭環境は劣悪で、彼女が寝たきりになっても金の無心に来る。
ボクシングに出会うまでの彼女は飲食店のアルバイトで、生活に困り客の食べ残しで飢えを凌いでいた。
そんな彼女が優れたトレーナーに出会い、短期間でスターダムに上り詰める。眩しく華やかなリングで、大勢の観客の声援を受ける。
彼女の栄光は眩しすぎた。そして短すぎた。 
その短い栄光の時間は、彼女が彼女であった唯一の時間だった。
彼女はその眩い時間を忘れることを恐れた。いずれ意識が混濁して、その時間を忘れて生きることになったら・・。


生きている意味などないと。

 

家族とも縁を切り、親しい友人も、暖かな生活すら過ごしたことない彼女を、苦境のなかこの世に繋ぎ止めておく要素はもうなかった。この世で唯一信頼しているトレーナーのフランキーを除いて。
そして、彼女に残された唯一の望みを託すことをできるのは、彼しかいなかった。 それは、栄光の記憶を忘れない内に、この世を去ること。


トレーナーは苦悶する。彼女にとって唯一無二の存在であるはず自分が託されたことが、寄り添うことではなく、命を奪うことなのかと。

 

彼の選択したことが、同じ状況に置かれた人に取っての最適解ではない。むしろ、そうでない方向を全力で探るべきなのだと思う。
ただし、通常の倫理観を覆すに足る人生観を、人によっては備えていることがあるのだ。