人体 ミクロの大冒険 60兆の細胞が紡ぐ人生 / NHKスペシャル取材班
あなたは知っていますか。人体にとって最小の細胞は?最大の細胞は?最も多い細胞は?
答えは、精子、卵子、血液です。血液が細胞だと言うことも、普通は知らないですよね。しかもその数60兆!ブルゾンちえみもビックリ。
このように、人体の構成要素である細胞について、我々は意外と無知です。最近になって、細胞をトレースする技術(バイオイメージング)ができたことで、かなり研究が進んでいるようです。
印象的な記述をいくつか。
肥満になりやすい体質は存在した。子どもが胎内にいる時に母親が飢餓状態にあると、子どもは少ないカロリーでも生存できるように産まれてくる。これをエピジェネティクスと言う。胎内から、外部の状況を伺い、それに細胞が対応する能力を獲得するのだと。
これは産まれた場所に本当に食料が不足している場合にはプラスに働くが、現代社会では成人病のリスクを高める。妊娠中に母親が過度なダイエットをした場合等に、この不都合は発生する。
愛情ホルモンとも言われるオキシトシンの働きも興味深い。 オキシトシンは授乳や分娩の促進の際に分泌され、またスキンシップ等でも増えるとされる。更に社会的な営みにも大きな影響があるそう。
アメリカに、平原ハタネズミと山ハタネズミという、遺伝的にはほぼ同じだが、住む環境が異なるネズミがいる。平原ハタネズミは見通しが聞く環境なので、外敵から身を守るには群れで行動する必要がある。よって一夫一妻制で、夫は浮気をせず育児にも携わる。そうしなければ外敵から子どもを守れない。
逆に山ハタネズミは夫は好き勝手に交尾し、育児も行わない。この二種のネズミを調べたところ、オキシトシンの分泌量に大きな差があったというわけだ。
このことから、オキシトシンは社会生活に多大に関わると考えられる。実際に自閉症の人にオキシトシンを投与したところ、以前より、人とのコミュニケーションが円滑になったとの報告もある。まだ確定的な段階ではないが、昨今分かってきた発達障害の対応等に効果が期待される。
まだまだ未開拓ですが、今後が楽しみな分野ですね。専門家でなく、テレビのプロデューサーが執筆しているので、私のような素人でも分かりやすい一冊でした。