ザ本ブログ

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声のサイエンス あの人の声は、なぜ心をゆさぶるのか / 山崎広子

人の声に、あらゆる角度から迫った本。

歌声はもちろん、日常の話し声、スピーチ場面。それらを性別、体格、時代、地域なども絡めて検証していく。

 

面白かったのは、日本人の女性の声が時代とともに変化していくということ。女性の社会進出が進み始めて、経済的にも豊かだった時は、女性の声は今よりも低かったらしい。そして、時代時代の女性の声を代表しているのは、アナウンサーなのだと。

一般的に、動物や子どももそうだが、弱い動物の声は守ってもらうために高いことが多いそうだ。それを今を生きる女性にそのまま当てはめていいかは分からないが、社会進出がそれなりに進んだとはいえ、給料は上がらず派遣は増え、何より経済の男女差は先進各国のなかでもトップクラスだ。

こうした不遇の状況が、人のメンタルに何も影響を及ぼしていないはずがない。男性については言及がなかったが、同じようなことが起きているのかも。それとも構造的に女性の声の方が可変度が高いとか、男は社会状況に鈍感であるとかもありそうだが。

 

構造的には、体格が大きい(声帯が長い)方が声が低くなる。男女差は、喉仏のせい。張りつめた糸より、弛んだ糸を弾いた方が音は低いので、これは理解。

また地域によっても、声の質は異なる。反響する場所の少ない砂漠地帯では、よく響く甲高い声がいい声とされる。石造りの街で反響が多いと、低く落ち着いた声が好まれる。

ヨーロッパは規則正しさ、アジアは雑然とした音を好むのだとか。紐解くだけ、どんどん面白くなる予感。

 

宗教者は声が人に与える影響を理解していて、確かに宗教的な演説のエピソードは、巨岩の前や、洞窟など音がよく響くロケーションが多いらしい。悟りを開くのも、洞窟とか多いですよね。こだまする音が、人の深層心理にもたらす効果は計り知れない。

オペラ歌手などは、全身を響かせるため、指先が振動で痺れる人もいるのだそうだ。スゴい。ポップ歌手の声も、それぞれ特徴があって、優劣付けるものでもないらしい。

 

ここまでも既にかなり興味深かったけど、本書の目玉だと思ったのが、地声と聴覚フィードバックの話。録音された自分の声って、あまり好きじゃない人が多いですよね。録音された自分の声を聞き込み、心地よい声を発見してそれを再現するように訓練すると、自分の本当の声に近づけるらしい。

 

状態にもよるけど、この手法で生活が改善されたり、人生が劇的に変わったりするケースもあるんだとか。声は振動であり波長であり、人生で一番多く聞く声が自分の声である。しかもそれは体内から発生し、否応なく全身に行き渡る。

確かに、自分の声が心からしかも客観的にも好きになれれば、心理的、体質的にさえ多大な影響を及ぼすのは想像できない話ではない。

 

声を発するメカニズムはまだまだ未知の領域が多いらしい。声帯だけで声を出すわけでは全くない。ちょっと自分の声について、改善とゆうか、もっと興味を持って接したくなった。