ホーリーランド / 森 恒二 <史上最もリアルな格闘マンガ>
アラフォーなのに、飲んだ帰りの電車で読んでたらなんか泣いちゃったんですよね。
イジメられ、自殺寸前まで追い詰められた主人公(神代ユウ)が、引きこもってボクシングのワンツーだけを本を読んで身に付け、ケンカを通じて自らを取り戻していくストーリー。
やはりいい作品というのは、絶望の描写が、胸に迫るものではないだろうか。いじめの描写は長いものではなかったが、人の絶望というものを、端的に表現していたと思う。
“無感になりたくて”自殺を試み、“閉じ込めていた、あらゆる五感が喚きだし”失敗する。死ぬことを土壇場で恐れたユウが、慌てて必死で金網の内側によじ登って戻ろうとする一幕。作者が同様の精神状態で、同じ行動をしたことがなければここまで臨場感を持っては描けないのではないか。
もう一つ、印象的なシーンがある。街でケンカをしながらも、ようやく友人を得たユウ。しかしあろうことか、その友人がヤンキーの的にされ、リンチで大ケガを負ってしまうのだ。
絶望し、部屋の隅にうずくまるユウ。ここで泣いたりとか、頭を抱える動作はありがちだと思うんです。ここでユウは頭に手をやり、自分の髪の毛をグシャっと掴むんです。
身に覚えがありませんか?
絶望で頭を抱える。でも誰かにすがりたい。でも一人だから、他に掴むものもない。そして自分を許せない気持ち。後悔。
そんな感情が、この動作に込められているんだと思うんです。
この繊細な描写で、僕は一気にホーリーランドが好きになりました。
格闘技に明るく自分でも実際やっており、どうやら街のケンカもしていたらしい作者なんですが、実際はとても内向的で繊細なことが分かります。
その後は、ユウが葛藤をしながらも路上で技を磨き、様々な格闘技者と試しあいます。それらの格闘技の描写と作者の解説が鋭く、<史上最もリアルな格闘漫画>、などと呼ばれたりします。
ここで突然ですが、独断と偏見で、ホーリーランドのベストバウトを決めたいと思います!笑
19巻の中で、タイマンだけで27戦以上あるのですが、その内のベスト3で。
第3位 ショウゴ VS リュウ
ある意味で、最もリアルな結末に至った一戦。
この闘いで、長きに渡ったユウとショウゴの溝は埋まるも、取返しの付かない結果も同時にもたらしました。
ユウの親友であるショウゴが、子どもの時に亡くなってしまった父親への想いや、強さへの偏ったこだわりを受け入れ決別する闘いとなりました。
これまでも決して弱く描かれていたわけではない空手ですが、ここで更なる戦略性と実戦での強さを見せます。
本来なら使うべきでない技を繰り出すショウゴは、彷徨っていた期間に犯した罪の償いを、自身に求めているようでした。
わだかまりが解けたばかりの親友が、逮捕されるのを目の当たりにするユウ。大団円に向けての加速を予見させる一戦でした。
第2位 ユウ VS マサキ
ほとんど正気を失っているユウを、イザワマサキが圧倒的な力で止める一戦。 ユウに取って、暗闇を照らす光であるかのような存在。
かなり初期での衝突となりましたが、路上での最高峰という試金石を示す上での欠かせない闘いでした。
はじめの一歩で言えば、宮田君と一歩が初期に戦ったような感じですね!(最後もこの二人の戦いであるべきだと思うんですが)
完全無欠に思えたマサキにも失策はあり、何より心に大きな傷を抱えていることに気付かされたユウ。
この闘いがホーリーランドの最後を飾るのに、この上ない布石であり、彩りを添えることとなります。
第1位 ユウ VS ヨシト
やはりこの一戦でしょう。10年ぶりに読んでも、電車で号泣してしまいました それまでの戦いとは、一線を画すものがあるんですよ・・。
やはり最大の魅力は、敵であるヨシトの高い実力と清々しいキャラクターでしょう!またプロを志すヨシトは、現時点でのユウの人生の先輩と言っても過言ではありません。
それまで裏の“夜の世界”でユウを導く存在であったイザワマサキに対し、輝かしいばかりの表の“昼の世界”を歩みだしているヨシト。
ヨシトは街への未練を断ち切るべく、街の顔であるユウに勝負を挑んだ。その姿もまた、未来のユウを予見させるものなのです。
またこの戦いは、ユウが自主的に再戦を挑んだ数少ないケースで、尚且つ純粋な動機であったのが初めてでした。 (長田戦の際は親友を侮辱され、また不本意な形で一方的にやられた陰欝なモチベーションがあった。)
ヨシトとの闘いの中で、ユウはそれまでの対戦者から得られた技術や経験を存分に発揮します。そして、イジメられ一人の友達もいなかった過去の自分に比べ、今の自分の中に多くの出会いが積もっていたことに 気付きます。
そして勝負は拮抗したまま決着へ・・。この勝敗には作者も悩んだのではないでしょうか。
一戦だけ切り取れば、本当にどちらの勝ちでも良かったのだと思います。しかしここは、“不良狩りは負けても必ず復活する”、ストーリー を維持するため、内容的にはヨシトを優勢に見せつつ、ユウが勝ちを拾う形を演出したのだと思います。
対戦後、ギャラリーは持てる全てを出し尽くした二人に、惜しみない賛辞を送ります。
負けたヨシトも納得し、今度は振り返ることなく自分の道を歩みだします。街に未練を残す者たちへ、背中を押すメッセージを 残して。
HUNTER×HUNTER /冨樫義博 連載中35巻 (ついにアメトークに!笑)
行き当たりバッタリで計画性のカケラもないし、たまにラフ画で掲載してくるし、休載しまくりのに、全て許せる。
【2018年版】絶対読むべきオススメ漫画ランキング・ベスト18 ※30年5月5日更新
- 未完、完結は意識しません。
- 同じ作者の作品もあり。
- 全て私の主観です。
- 随時更新していきます。
何事も、一番を選べと言われると悩むものですが、この作品に関しては譲れない。お前がナンバーワンだ、『ベルセルク』。
序盤のグロさで音をあげそうな、ベルセルク初心者達に告げる。まずは8巻まで読め(命令)。
そこで気付くはずです。この作品はそこらのグロを売りにした浅薄な代物でない。常軌を逸した異なる才能を持ち、それが故に孤高かつ孤独な二人の男の、イビツで至高の友情賛歌であることを。
ハイスコアガール / 押切蓮介
80年代、90年代って、ポップ・サブカルチャーの全盛期だったって思いません?思い出補正もあると思うけど、昨今の作品は、未だに当時の残滓を引きずっているものが、多いように思う。
まあ自分はそこまでサブカル好きではないし、語るに落ちてしまうのでここらで止めておきますが、今回紹介したいのは、完全なオッサンホイホイである、
『ハイスコア・ガール』
いやー、最近一番キュンキュンしたマンガであります。キュン死、必至。
舞台は90年代、東京、神奈川辺り。ゲーム、ゲーセンを舞台に繰り広げられる、ラブコメですね。現在8巻。主人公が小学生から始まった物語は、現在高校生となっております。
なんと言っても目を引くのが、ゲームやゲームキャラがふんだんに登場すること。登場人物達が、ゲームに興じる時に、ゲーキャラが描かれるのはもちろんですが、主人公の心理描写をガイルとかが代弁するのが斬新。ぜひ、一読あれ。あなたは、どのキャラをエディットする?(笑)
『サイコメトラーEIJI』 原作:安童夕馬、作画:朝基まさし
連載されていたのは、20年くらい前でしょうか。当時の渋谷や、自分には縁のない不良文化の最先端を行っている感じがして、ワクワクして憧れたものです。
最近久しぶりに手に取る機会があり、読んでみると
ムチャ面白い
さすがに中高の時に読んでいたものだし、超能力がちょっと使えるだけのヤンキーマンガだろうと、タカをくくってたんですが、度肝を抜かれましたね。
まずは、圧倒的な画力。上手い雰囲気とかじゃなくて、現実のアクションを理解できるように描ききるのが、抜群に上手い。デスノートの作者の小畑健も上手いですが、アクションはこちらが格段にカッコいいですね。そして原作者が別にいるので、1章毎の構成がしっかりしていて読みごたえがあります。
主人公・映児のサイコメトリー能力が、かなり限定されているというのが、ミソなんでしょうね。触れた対象物から、断片的な情報を得るだけ。万能過ぎると、謎解きの要素がなくなってしまうし、主人公の能力以外の要素が色褪せやすい。欠点の多い能力だからこそ、映児の意志の強さや、身体能力、または仲間の助力が輝くのでしょう。
今読むと、時代の隔たりは感じます。まだガラケーだとか、ファッションとか。渋谷も、当時のギラつきは、もうないですもんね。でも、それがかえって当時の雰囲気や文化を伝える役割を果たしています(笑)。轟編、カンナビス編、そして最終章の疾走感はハンパじゃないです!!昔読んだことがある人も、まだ読んだことがない方も、ぜひ手に取ってみてください。止まらなくなること請け合いです。