ザ本ブログ

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『ベルセルク』の遺志を引き継ぐ親友の想いが熱すぎる

 昨年、『ベルセルク』の作者である三浦健太郎氏が、54才という若さで亡くなった。

 

 ベルセルクと言えば、全世界で5千万部売れているダークファンタジーで、重厚に描き込まれた絵と世界観、神懸かり的な展開で世界中に多くのファンがおり、もちろん私もその一人だ。あまりにも濃密に描き込む作風のため筆が遅く、連載開始から30年経っても、中々ラストが見えてこない(笑)。
 

 それでも、少しずつでも先が読めるならと、毎巻楽しみにしていたのですが。。最も好きな漫画だけに、絶望もひとしおでした。
 不謹慎な考え方ですが、凄いスポーツ選手が絶頂期で亡くなったとしても、いずれ同じような記録を打ち立てる選手が現れるだろうと思います。
 でも、一つの作品が途切れたものを、誰かが続けて創作することは通常不可能です。それは作者の頭の中にしかないのだから。凡庸な作品なら、無理やり終わらせてしまうこともできるでしょうが、数多くある漫画の中で、『ベルセルク』は次元が違います。そう考え、昨年は悲しみに打ちひしがれていました。。

 

 しかし今年、驚愕の発表がされました

 

 なんと『ベルセルク』の連載が再開されるというのです。
 初めは「どういうこと?」、と思いました。クオリティの低いスピンオフ作品なら、むしろやめて欲しいとすら思った。俺の『ベルセルク』への執着心は、ガッツのゴッドハンドに対するソレと同等だぞぉ!中途半端は許されん!

 

 ここでもう一人の人物を紹介しなければなりません。『ベルセルク』の作者、故・三浦健太郎氏の盟友、森恒仁氏です。この方もプロの漫画家で、三浦先生ほど知名度はありませんが、『ホーリーランド』『自殺等』『無法島』『創世のタイガ』など、濃いテーマの作品を描いており、この方についても私は大ファンです。

 

 そして森先生と三浦先生、この二人は幼馴染で親友なんです。

 

 このことが、『ベルセルク』の奇跡の復活のきっかけとなりました。『ベルセルク』を諦めきれない弟子達(アシスタント達)が、絶筆となった回を最後まで描き上げ、森先生のもとに持ち込んだのです。その回は、後半はまだ人物も描かれておらず、完全にゼロから構成した形になりました。森先生はそれを聞いた時、「正直厳しいだろう」と思って原稿を手にしたようです。三浦健太郎の画力を、弟子とは言え、他人が再現できるはずがないと。

 

 しかし原稿を読んで、考えが変わりました。三浦健太郎の『ベルセルク』が、ここに在る。弟子たちは、三浦健太郎の技術と遺志を見事に引き継いでいたのです。

 

 三浦先生が亡くなってから、森先生は忸怩たる思いを抱えていました。道半ばにして亡くなった親友の作品に対して、どう向き合えばいいのか。弟子たちは制作の現場の中で、作品の今後の展開を、断片的には聞いていました。しかし、ラストまでを三浦健太郎本人から聞いていた人物は、親友である森先生ただ一人。せめてストーリーを文章で発表しようかとも思い悩みましたが、弟子たちの執念に触れ、覚悟を決めました。自分が監修し、弟子たちの制作で、『ベルセルク』を最後まで描き切ろうと。

 この超絶胸熱展開について、まとめます。
 親友で幼馴染の二人が、プロの漫画家になって同じ雑誌で掲載し、片割れが亡くなると、残った親友がその作品を最後まで受け継ぐ。上手く出来すぎてて、実話とは思えない。この実話が映画化されたら、涙なしで見る自信はない。
 ぜひ、映画化お願いします。そして三浦先生に尊敬と崇拝と哀悼との意を〝捧げ〟ます。