ザ本ブログ

読書をメインに。他、雑記などをアップしていきます。

銀河不動産の超越 / 森 博嗣

えーと、びっくりするほどつまらなかった。
無気力な、流されがちの学生が小さな不動産屋に就職し、そこの社長の知り合いの金持ちに、やたら広い住居を提供してもらう。その広い住居に様々な人が居候したり、いきなり美女が結婚を申し入れて転がりこんできたりする。

 

話は以上です。

 

さすがに美味しい話しかないので、最後にどんでん返しとか、途中でピンチくらいあるのだろうと思いきや、そのまま美女と結婚して、小さな不動産屋の社長職を引き継いで終わり。ナニコレ。

 

なんのためにコレを書いたのか真剣に知りたい。そんでよくまた文庫化までされたな。
何か深い考察があるなら、誰か教えてくださいませ。

生きる僕ら / 原田マハ

やっぱり現実なのにファンタジー感が拭えない、原田マハさん。

 

田舎への移住はただでさえ成功率が低いのに、引きこもりのある種コミュ障の若者が、果たして一体都合よく 溶け込めるものなのか。まあ人気者のおばあちゃん補正があったとはいえ。
縁もゆかりもないと、やはり移住は厳しいと思うが、親族がいればかなり違うのかも知れませんね。

 

あとは、本人の意志次第。

 

自分も、自家用くらいの農作には興味があるので、いずれなんらかの形では取り組んでみたいと考えているのですが。 ある程度の資産収入があれば、首都圏から遠すぎない場所で悠々自適の生活を送るのは、そう難しくないように 思える。ただいま取組み中です笑。


物語後半は、お米作りと介護が中心。農業って都会人から見るとやりがいがあるように感じられるけど、実際は地味だし 虫はいるし、やってみない分からない大変さがモリモリありそうですよね。そういう意味では、本作は都会目線かなぁ、って 感じもしますが。

 

なんとなく登場人物たちのエピソードもそこまで絡み合ってないような。
でも読後感は爽やか。それが原田マハ。

(あこがれの田舎暮らしをしてみませんか?)

風が強く吹いている / 三浦しおん

小説では終盤、電車の中で泣きそうになったが、アニメ版はどうか。
結論から申しますと、とても良かったです!小説の思い入れも加味されているかも知れないけど。すでに映画化もされてるし、今更アニメかぁ~って感じもあったけど、スタッフのカゼツヨ愛を感じましたよ笑。
最近、昔のマンガのアニメ化が良かったりしますよね。バナナフィッシュもメチャ良かった!

箱根駅伝をテーマにした他の作品があるかは知りませんが、駅伝ならではの優れた構成ですよねー。
素人が出場しちゃうのは荒唐無稽だけど、それも丁寧な取材と緻密な描写で、不可能じゃないかも?と思わせてくれる(現実には、どうなんでしょう)。
10人でタスキをつなぐことに着目し、本番では一人ひとり、走っている間はエピソードが展開されることになる。
素人ならではの、それぞれの人生観とかが顕れていて、とても考えさせられる。
走者の順番も、あれ以外考えられないですよね!走るという、陸上を知らない人からすると単純に見える作業も、 体格やそれまでの経験から、それぞれフォームは変わってくる 。
カケルの走っている姿は美しかったですねー。不安定なメンタルだったカケルが、名実ともにチームの精神的支柱に なっていく成長譚でもあります。彼の区間新は、ハイジへの恩返しでありました。
そして実際には襷をハイジに渡したのですが、寛政大学の未来への襷はカケルが受け取った形になります。

最後まで、完璧な作りこみの構成。見終わったら、走りたくなりますね。すぐバテるんでしょうが笑。

カフーを待ちわびて / 原田マハ

原田マハさん、何冊か読みましたがこれが代表作なんですかね。第1回日本ラブストーリー大賞受賞。そんな賞、初めて知りました笑。

 

何冊か読んだ(キネマの神様、生きるぼくら)感想としては、現実を描いてるのに、非現実的だなあと。ファンタジーにリアルさは求めてないし、振り切れてる作風ならそれもまた良し。

 

一応現実なのに、微妙にちょっとあり得ない。そこのところの気持ち悪さはありますが、本作はそこを無視すれば、非常に爽やかな読後感のある作品。誰にでも気軽に勧められます。

 

カフーとは沖縄の方言で果報のこと。沖縄好きの人なら、その舞台設定だけで旅行気分が味わえる。身体にハンディがあり、生い立ちからも少し閉じ籠り勝ちな主人公・友寄明青。そんな明青のもとに、不意に訪れた色白に美人、幸。沖縄を舞台に語られる、ひたすら純粋でもどかしいほのかな恋模様。

難しいことを考えずに、ピュアな気分にひたりたい気分の時には、いい一冊じゃないですかね。

サラバ  / 西 加奈子

これほどまでに自伝が書いてみたくなった物語は、初めてだ。

読者全員はそう感じるかは、分からない。なぜなら本著の上巻は主人公が幼少時代にエジプトへと転校になり、日本に帰ってくる シーンが主題なのだが、私自身も幼少時代にイギリスに数年いたことがあるからだ。
(ちなみに作者は、幼少期にテヘランに滞在していたことがあり、本作品は自伝的要素もあるとされる)


言葉が通じないながらも、現地の子どもと親友と言うべき間柄を築いてく過程は、自分の幼少期の記憶を強力に呼び起こされる思いだった。とにかく、子どもの言葉にならない感情を描写する力が抜群。子どもが、そのまま大人の語彙力と表現力を持って紡いでいるかのような表現。子どもの自分が、目の前に立ち現れているかのように、錯覚してしまいそうだった。

幼少時に、自分より少し行動力があって大人びた親友に抱く万能感のようなものは、共通の経験なんですかね。
読んでいて、本当に懐かしく気恥ずかしかった笑。

全く違う文化に、子どもながらの柔軟さと臆病さで溶け込んでいく様も、微笑ましい。そして、日本に帰る時は元いた場所とはいえ、小学校高学年。完全な子どもとして、回帰するのは微妙な立ち回りが必要で、そこで姉弟の明暗が分かれてしまう様もリアル。
自分は小学校3年生で帰国した際には、日本の小学生はませているなと感じた。
ちなみに、主人公のコミュニケーション能力、ってかスペック全般は僕よりはるかに高いですね笑。

中巻から下巻にかけて、弟より全般に劣る姉の異常性が浮き彫りになり、存在感が増していく。 実は、自分は物語を読み終わった今でも、この姉の存在というか、メッセージ性とでもいうのか、がとにかくよく分からなかったです。
要領よく生きていく弟に対抗する存在として登場しているのかも知れないけど、おそらくは最後に主人公である弟に用意したカウンターも、イマイチ個人的にはクリーンヒットしなかったかなぁ、という印象です。

それぞれにエピソードはとても魅力的だけども、それがまとまっていて、何か共通するものが根幹に流れているかは、自分としては不明。まあ、自伝的作りなら、それも致し方なしか。

自分は、幼少期を追体験しているかのような上巻が、もっともインパクトがありました。