ザ本ブログ

読書をメインに。他、雑記などをアップしていきます。

名画座っていいものなんですか?映画好きの方に聞きたい。  キネマの神様 \ 原田マハ

自分は映画はよく見るんですが、映画館はほとんど行きません。まずは値段が高すぎる。と、人混みが嫌い。あと2時間座ってるのが苦手。ので、家でDVDでの鑑賞がメインになってしまいますね。皆さんはどうです?真の映画好きからしたら、有り得ないんでしょうが。。

 

一番泣いたのは『犬と私の10の約束』(犬大好き)。笑ったのが『俺たちフィギュアスケーター』。キュン死しそうになったのが『ローマの休日』(ヘプバーン可愛すぎ)。最近ハッとしたのは『言の葉の庭』、『シン・ゴジラ』、『愛を読む人』。後味悪いけど忘れられない『永久の語らい』、『3分間のピアニスト』。何か好きなのは『プリシラ』(シャーリーンいいよね)。ジブリは大体好き(ゲドは酷かったが)。『スターウォーズ』が、最近ようやく楽しめるようになった。

このラインナップがどういう傾向なのかは知らない。ミーハーなんでしょうね。

 

本書は、古き良き名画座と、映画雑誌を復興させようというもの。何か人物の掘り下げがイマイチで、自分はあまり入り込めなかった。。名画座のシブい描写があるわけでもなく、良さが分からない。最後はネットの力で復活!ってのも、若い世代受けになるのかどうか。どうにも中途半端に感じてしまった一作。今度は代表作の『カフーを待ちわびて』を読んでみようかな。

 

仕事としての芸人を知る上で、一読の価値あり  火花 /  又吉 直樹

言わずと知れた、芸人ピース又吉の、芥川賞受賞作。

本当に、ちゃんと文学してましたね..。他に大変な仕事をしながら、このクオリティは、素直にすごいと思います。この感性を持ちながら、芸能界でやっていくというのは、大変なメンタルの強さが必要かと。サッカーもかなりのレベルでやっていたようなので、そちらでも鍛えられたんですかね。

 

内容は、個人としては琴線に触れる部分はありませんでした(笑)。ただ、芸人で身を立てていくという過程を、詳細に語ってくれるので、お仕事小説としての価値がまずあると思います。

 

成功話ではなく、売れそうで売れない芸人の一喜一憂する辺りがリアル。そうゆう先輩や後輩を多数見てきて、自分も売れなかったかもしれない姿に、心を重ねて描いたんでしょうね。そして夢敗れた後も、現実に折り合いを付け、たくましく生きていく姿も‥。

 

強くおすすめするわけではないのですが、又吉さんとは、本当にマジメな方なのだなと、感じました。

悩まないってことは、人生をただ流してるだけだろ? : 人はなんで生きるか / トルストイ

 誰にでも、生きることとか哲学的な問題に悩んだことってあると思うんですが(ってか全くない人って話がつまらない)、自分にも20代半ばくらいに、そんな時期がありました。その頃は、人からの悩み相談を受けることも多かったような。30歳くらいを境に、とんと来なくなりましたけどね。初めての就職とか、婚活とか、とにかく初の自立でみな不安定になるのでしょう。

 

 自分は就職したものの、2年たたずに辞めてしまい、実家に戻ってぶらぶらしてました。飯は食わせてくれるので、切迫感はないが、性格上焦燥感もはないけど、なんか悶々してましたね。その頃はたまに友達と飲む以外は、部屋に籠って、宗教書とか哲学書などを読みふけってました。いいご身分だ。

 

 “なぜ生きるのか?”などと大層な命題の答えに、本を読むだけで、到達できるはずもない。答えは一人一人違うかも知れないし、そんなものはないかも知れない。仮にあったとしても、それは行動や体感を伴うもののはずだ。

 

 そんな時、たまたまトルストイの、『人はなんで生きるか』を読んだのです。タイトルに惹かれたわけでもなく、薄くて持ち運びやすそうだとの理由で、何となく読み始めました。表題作を、それほどの感慨もなく読み終え、家のトイレに入っている時にふと、《人は人のために生きる》というフレーズが、頭に浮かびました。

 

 それを宗教的体験と呼ぶのが相応しいかは分かりませんが(今日に至るまで自分は無宗教ですし)、その瞬間、「あ、これでいいじゃん」と思い、それまで思い煩ってた小さな悩みや疑問が、氷解してしまったのです。以降10年以上経ちますが、これと言って悩んだことがありません。迷ったら、人のためになる方、あるいは人が楽しんでくれる方を、選べばいいのですから。

 

 もちろん、何が人のためになるかも、考え方一つで変わってしまいます。経験不足により、独善的になってしまうこともあるでしょう。しかし、間違えたと思ったら、直せばいいのです。大事なのは、その時その時、何が人ためになるかを問い続ける心なのです。

アキラとあきら / 池井戸 潤

 『半沢直樹』、『下町ロケット』などで言わずと知れた池井戸潤のお仕事小説。こちらも半沢同様、銀行目線で語りつつ、主人公の生い立ちから、会社経営の要素を盛り込んだ内容です。

 

 経済的に恵まれた暎(アキラ)と、父親の会社の倒産で幼い内に、人生の辛酸を舐めた彬(アキラ)の人生が交錯します。彬の幼少期の倒産体験は身につまされるものがあります。自分の小学校のクラスにも、家庭の事情で急遽転校する子がいたので、当時は良く分からなかったけども、あの時どんな思いだったのか、今はどうしているのか、大人になって今更思いだしてしまいました。

 

 貧しいながらも、子どもらしい健やかさと、色んな人の手助けを得ながら成長していく彬の半生が胸熱でしたね。後半は著者お得意の、銀行業務と二人のアキラの生い立ちを絡めた、緻密な内容が展開されます。個人的には、二人の子ども時代の描写の方が、文学的でやるせなくて好きですね。業界の話は、どうしても込み入ってしまうので。

 

でも続きが気になって、あっという間に読了しました。池井戸作品の中でも、おすすめです。

AX /  伊坂幸太郎

 今まで伊坂作品のイメージとしては、読んでいる時は続きが気になってサクサク読んでしまうが、終わった後には何も残っていないという感想。完全にエンタメ志向なんですね。

 

 今回は友人のオススメされて読んでみたんですが、何と親子2代に渡る構成になっており、父と息子のやり取りや思い出に、鼻の奥が熱くなるものあり。伊坂先生も、年を経て作風が変わったのかなと思いました。

 

 しかし、少し時間を経てみると、どうも心に残るものがない気がする・・・。これは何かと考えてみると、文体が淡々としてシンプルなのは、作風だからいいとして、たぶん登場人物たちが、舞台装置に過ぎないからなんだろうと。

 

 構成はパズルのピースのようにバッチリ上手くはまり、その妙手には舌を巻かざるを得ないんですが、それが故に不確定要素や熱がないように感ぜられるのか。

 

 よく漫画だと、登場人物が勝手に動き出すとか聞きますが、完璧に構成されたシナリオにはそんなものは必要ないんでしょうね。自分のようにいい加減な人間は、少しばかり論理破綻し、ストーリーを脱線してても、随所で琴線に触れるものを好むのかも知れない。

 

 結論として、彼の作品は、現代ではそこそこ売れるが、多分後世には残らない?もちろん、それは良い悪いの話ではないし、本人にしてみれば大きなお世話といったところでしょうな。