ハイスコアガール / 押切蓮介
80年代、90年代って、ポップ・サブカルチャーの全盛期だったって思いません?思い出補正もあると思うけど、昨今の作品は、未だに当時の残滓を引きずっているものが、多いように思う。
まあ自分はそこまでサブカル好きではないし、語るに落ちてしまうのでここらで止めておきますが、今回紹介したいのは、完全なオッサンホイホイである、
『ハイスコア・ガール』
いやー、最近一番キュンキュンしたマンガであります。キュン死、必至。
舞台は90年代、東京、神奈川辺り。ゲーム、ゲーセンを舞台に繰り広げられる、ラブコメですね。現在8巻。主人公が小学生から始まった物語は、現在高校生となっております。
なんと言っても目を引くのが、ゲームやゲームキャラがふんだんに登場すること。登場人物達が、ゲームに興じる時に、ゲーキャラが描かれるのはもちろんですが、主人公の心理描写をガイルとかが代弁するのが斬新。ぜひ、一読あれ。あなたは、どのキャラをエディットする?(笑)
『サイコメトラーEIJI』 原作:安童夕馬、作画:朝基まさし
連載されていたのは、20年くらい前でしょうか。当時の渋谷や、自分には縁のない不良文化の最先端を行っている感じがして、ワクワクして憧れたものです。
最近久しぶりに手に取る機会があり、読んでみると
ムチャ面白い
さすがに中高の時に読んでいたものだし、超能力がちょっと使えるだけのヤンキーマンガだろうと、タカをくくってたんですが、度肝を抜かれましたね。
まずは、圧倒的な画力。上手い雰囲気とかじゃなくて、現実のアクションを理解できるように描ききるのが、抜群に上手い。デスノートの作者の小畑健も上手いですが、アクションはこちらが格段にカッコいいですね。そして原作者が別にいるので、1章毎の構成がしっかりしていて読みごたえがあります。
主人公・映児のサイコメトリー能力が、かなり限定されているというのが、ミソなんでしょうね。触れた対象物から、断片的な情報を得るだけ。万能過ぎると、謎解きの要素がなくなってしまうし、主人公の能力以外の要素が色褪せやすい。欠点の多い能力だからこそ、映児の意志の強さや、身体能力、または仲間の助力が輝くのでしょう。
今読むと、時代の隔たりは感じます。まだガラケーだとか、ファッションとか。渋谷も、当時のギラつきは、もうないですもんね。でも、それがかえって当時の雰囲気や文化を伝える役割を果たしています(笑)。轟編、カンナビス編、そして最終章の疾走感はハンパじゃないです!!昔読んだことがある人も、まだ読んだことがない方も、ぜひ手に取ってみてください。止まらなくなること請け合いです。
海スゲー!海怖えぇーっ!!てなるマンガ / 『海獣の子供』五十嵐大介 ※2019年6月7日、映画公開。主題歌:米津玄師、「海の幽霊」
このマンガを読んだら、しばらく他の作品を読む気がしなくなった。そのくらい独特な世界観を持ち、読み手の感受性を深く揺さぶってくる。
あらすじを簡潔に述べるのは困難だ。
ー 舞台は現代・日本。神奈川の江ノ島辺り。中学生の琉花は風変わりな母親と、その母親を避けるように生活している父を両親に持ち、また自身も人との関わりを持つのが苦手だった。部活動で級友をケガさせてしまい、謹慎を命じられた退屈な夏休み。そんな折り、琉花の周り、いや世界で小さな異変が起きていた。それは世界中の水族館で、魚が消えていくというもの。地域や数、魚種にも関連性はない。共通するのは、消えゆく魚には“光る斑点”が現れ、水と溶けるようにいなくなるという。
そんな琉花の前に突然現れた少年、海と空。二人に両親はいない。何と、漁業の網にかかって海から引き上げられたと言うのだ。海中でジュゴンに育てられたとされ、海をまるでイルカや魚のように泳ぐ、海と空。そんな二人に、交わす言葉は少なくとも惹かれていく琉花。琉花もまた、海と深い関わりを持つ生い立ちだったのだ。しかしある時、琉花は気づいてしまう。海と空、二人の体にもあの水族館で消える魚と同じ、“光る斑点”があるということに。舞台は日本を飛び出し、大海原へと向かう。はるか水平線の先に、三人を待ち受けるものとは。ー
いかがでしょうか。興味を持たれましたか? ←自信ない
こんな感じの説明になっちゃうんですよ(^^;
本当に独特な作品なんです。ストーリーもあるような、ないような..。とにかく、海と地球、果ては宇宙まで絡めて考察するような、不思議なテーマなんです。その中に、海や民族にまつわる不思議な話や伝承を織り混ぜており、何とも言えない空気感を生み出しております。
作者の五十嵐大介も、かなり独特な漫画家でして。ほぼ独学でマンガを書いており、ボールペンだけで作品を仕上げちゃうこともあるよう。3年くらい農家で自給自足の生活をしたり。寺の境内に住んで、旅行生活をしたりとか。そんな、自然に溶け込むような作家だからこそ、気負いのない、澄んだ作品が描けるんでしょうね。
他の作品も、魂に直接働きかけられるような、純粋なものが多いです。紹介はまたいずれ。
※2019年6月7日に、映画公開しますね!これは楽しみだ。
このマンガを超える作品に出会えない / 『ベルセルク』三浦建太郎
何事も、一番を選べと言われると悩むものですが、この作品に関しては譲れない。お前がナンバーワンだ、『ベルセルク』。
序盤のグロさで音をあげそうな、ベルセルク初心者達に告げる。まずは8巻まで読め(命令)。
そこで気付くはずです。この作品はそこらのグロを売りにした浅薄な代物でない。常軌を逸した異なる才能を持ち、それが故に孤高かつ孤独な二人の男の、イビツで至高の友情賛歌であることを。
私はこの作品に、いつも問われつづけている気がします。真の友情は、馴れ合いでは得られない。方向は違っても、何かを追い求める者同士でなければ、分かち合えない感情があるのではないかと。
そして愛と友情とは、なんと複雑な関係にあるものなのか。果たして一人の人間の生で、豊潤な愛情と、煌めく友情は両立しうるものなのかと。狂気に身を委ねなければ、叶いそうもない。果てにあるのは、破滅かそれとも…。
緻密で深淵な世界観を舞台に、圧倒的な画力で描かれる他の追随を許さないアクションと、ガッツ先生のあまりにもシビれるセリフ回しに目を奪われがちですが、この作品の主題は、あくまで愛と友情。世界で唯一の一大叙事詩にして、最強のダークファンタジー。まだ読んでおられない方には自信を持って言えます。「人生を損している」、と。あなたの“夢のかがり火“は、まだその手にありますか?
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うつヌケ / 田中圭一
うつ病体験記としては、コミカルで読みやすいです。“自分は大丈夫!!”、と思う人が予防として読むのもアリ。うつトンネルの中の人も、抜けてもまだまだ不安な人も、読んでソンなし。サクッと読んじゃいましょう。
うつ病の体験記的なものはチラホラ読んだことありましたが(『ツレうつ』とか)、本作はうつを体験した漫画家と編集者が、協力して作り上げたことと、17人の方をインタビューしてまとめたことが新しいのかなと思いました。
語り口はギャグ漫画家だけあってコミカルですが(絵は手塚治虫風?)、一人一人の大変な苦難とその乗り越え方を、暗くなりすぎないよう、体験者ごとに紹介する内容です。
複数の体験談を読むことができるので、うつ病の原因や症状がそれぞれ異なることや、また共通点があることも、すんなり受けとめられます。
体験者の落ち込み方、また寛解に向けての心の持ちようや行動の在りかたが、絵と共に具体的に描かれるので、心の疲れている方にも、かなり読みやすいと作品だと感じました。