ことり / 小川 洋子
最近季節を感じていますか?気温だけじゃなくて、道端の草花や生き物の移ろいを通して。通勤の足を、ちょっとだけ止めてみよう。
誰にでも、小さなものに目を奪われる時期や瞬間って、あると思うんです。
小さな頃に虫を観察したり、道端の花や鳥にふと気付いたり。
ただいつしか小さなものは目に入らなくなり、自分の人生に関係のないものとして切り捨てられていく気がします。
主人公の男性は、幼少の頃より小鳥に心奪われ、小鳥と時折触れ合うだけの、慎ましい人生を送っていきます。
とある洋館の管理人を生業とし、障がいを持つ弟の世話をし、古びた家で生活を営む。
その生涯に奇跡らしい奇跡は一つも起こりません。そして誰に看取られることもなく、古びた家で亡くなっているのを死後しばらくして見付けられます。
誰に勝たなくてもいい、ささやかでも小さな幸せを噛み締めていけばいいんだ。と、言うようなありふれたメッセージが込められているとは思いません。
作中の男性のように、ただただ小さなものに目を向けていく。そんな不思議な読後感のある文章です。
余命10年 / 小坂 流加 【2018/3/7追記】
小坂流加さんの病名について 【※2018/3/7追記】
小坂流加さんがかかった病名についてですが、作中では明らかにされていません。また、出版社などからも公表された事実もないようです。
同じ病気の方の気持ちを慮ったものかと思いましたが、今では病気のことなど調べたらすぐに分かってしまいますからね。おそらくは作品のストーリーや雰囲気を重視し、学術的な内容に言及するのを避けたのかなと思います。
ただ病気の描写から、下記リンクの医療関係者の方が、指定難病86・肺動脈性肺高血圧症(以前は原発性肺高血圧症)ではないかと指摘しています。
調べると、本当に大変な病気のようでした…。心身の苦しい状態で、このような作品を紡ぎあげたことに、作者に改めて敬服し、またご冥福をお祈りいたします。そしてこうした難病が、今後解明され治療が可能になるのを願うばかりです。
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