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死体鑑定医の告白 /  上野 正彦

長年司法解剖を行ってきた死体監察医が、いくつかの事例を踏まえて、その仕事の内情を著した著作。

 

語り口は淡々としており、努めて冷静に、丁寧に一つ一つの事案について解説しようとする意志が伺えます。分かりやすく記述されており、文字数も詰まってないので、とても読みやすいです。

 

日本に於いては、司法解剖が必要とされる遺体の検死が充分に行えていない現状があります。そのため、死因不明の事案が多数出てしまっている。命を失っただけでも悲劇なのに、その上明確な理由が分からず処理されてしまったら、悲劇の上塗りになってしまいます。ましてや、それが理不尽にも誰かに奪われてしまったものであったら・・・。文字通り浮かばれません。

 

作者はこの現状に警鐘を鳴らし、不正確な死因で処理されるところだった事案を、精密な検証で覆した例などを紹介します。「生者はウソを付くが、遺体はウソを付かない」。身も蓋もないないようですが、それも一つの真実でしょう。

 

このような著作で、監察医の仕事に興味を持つ人が出てきたら、喜ばしいですね。また、警察や弁護士を目指す方には、必読の作品だと思います。