ザ本ブログ

読書をメインに。他、雑記などをアップしていきます。

単なる海と剣の冒険活劇ではない。生きる意味と責任を問う、さすがの「プラネテス」の作者。 「ヴィンランド サガ」 / 幸村誠

プラネテスで有名な幸村誠の作品。

時代は中性ヨーロッパ辺りのイメージでしょうか。舞台はヴァイキングが海を荒らし回っていた時代。

 

プラネテスのような、宇宙と科学とを織り合わせた人間模様を描いていた人が、いきなり剣を使ったバトル物にいくとは当初は驚きましたね。

戦闘描写も上手いし、戦術もしっかりしている。このまま中世活劇みたいに進んでいくものかと思いましたが、そこはさすがの幸村先生。主人公に剣を手放させ、戦闘によって読者にカタルシスを与える展開とは一線を画していきます。

 

それでもなお、バトルシーンは随所に発生するんですけどね。最初に主人公・トルフィンが戦闘を放棄した時は、バガボンドのような展開を危惧しました。隠遁してやけに哲学的になってしまうような..。それはそれで面白いんですが、スピード感や物語性が減ってしまうんですよね。だから休載になっちゃう笑。

 

本作で気になった点は、名前もないようなモブキャラに、かなり重要な台詞を言わせる部分です。戦闘に明け暮れてるようなヴァイキングに、戦いへの疑問を思わせ、生きる意味を投げ掛けさせたりする。そんですぐ死んじゃうんですが(笑)、本来は主人公が考えたり話しそうなことを、同じ時間軸の関係の無い人間に言わせるんですよね。

 

これは一石二鳥の表現だなーと思って。

主人公に全部言わせたら、ただの成長記録になってしまう。主人公の成長に応じたセリフを同時代の人間に言わせることで、同じ感覚を持つものが、直接接触はなくても確実にいることを示唆させる。無法を好む集団の中にも、様々な考え方の人間がいて、一枚岩ではないことを想起させる。

 

現在はただ戦いを忌避するだけでなく、新たな目標を掲げ航海する展開になってワクワクが止まりません。誰が読んでも損はしない、全方位に面白いマンガだと思います!!

 

アニメ化もされましたね(^.^)

うーん、出来はそこそこって感じかな。

 

 

先生の魅力がハンパない。全ての絵を書く人へ。 「かくかくしかじか」 / 東村アキコ

東村あきこさんのマンガを初めて読みました。

本作は自伝で、出てくる人物は多少名前を変えてはいるものの、実在の人物のようです。

 

舞台は宮崎だったり、金沢だったり東京だったり。宮崎県の田舎に住む作者はマンガ家になりたいと妄想するものの、そのための行動は一切せずに普通の高校生活を送っていた。とりあえず美大に行った方がいいかもと考え始めたころ、友人に誘われ、海に面した更に田舎町の怪しげなアトリエに、絵の勉強に通うことになった。が、そこは月謝5,000円と破格の安さではあったが、竹刀を持ったおっさんが高圧的は雰囲気で生徒を指導する異様な空間だった。このおっさんこそが作者の人生を変えた恩師であり、本作はこの先生を作者を巡るハートフル?(笑)な実話である。

 

ざっとこんな感じです。

基本的によく書き込まれたバトルものとかサスペンス的な作品を好む自分としては、割りと地味なテーマな本作ですが、続きが気になって一気に読みきってしまいました。サブキャラの魅力や、作者の恋愛やマンガ家へ至る道も興味深くはありますが、この作品は画家の先生の魅力が全てです。

 

先生はカッコいいというか、カワイイというか。絵の世界に身を置いて、それなりに有名ではあるものの、組織的なものには一切入らない変わり者、異端児だったようです。本作での描かれ方を見ていると、ポリシーというよりかは、全く興味ないんでしょうね。もしかしたら知らないのかも知れない(笑)。

 

自分の産まれた土地で絵を描く。目の前にあるものをただ描く。それだけ。金儲けも一切興味なく、自分の住む周辺の人に絵を教える。ひたすらにただ描けと教える。絵を書いて欲しいから、美大に受かるように一生懸命教える。

庭になった果物を食べ、市場の新鮮な魚を手早くさばいてシンプルに食す生活。こんなにブレずにシンプルに何かを追求している人間がいるとは。生活の全てがホンモノで、都会なぞ知らなくても、誰より濃密な時間を過ごしている。

 

対照的にぶれぶれで自堕落な作者。マンガ家として成功はしているものの、その過程や生活っぷりは、とても共感を覚えます。恩師と向きあえなかったことを自嘲していますが、恩知らずなことをしてしまうのって、誰にも経験あることですよね。作品の中でそれをつまびらかにするのは、とても恥ずかしいし、勇気のあることだと思います。

 

その赤裸々で等身大な描き方が、すごく感情移入してしまうんでしょうね。先生ばかり描いていたら、異端児の英雄録みたいになってしまうので。対比が、そのコントラストが読者は我が身のように思えてしまい、没入させてくれる。手の届かない魅力的な人物に憧れを抱く作者に共感できる。

 

締め括りまで、完璧な作品だと思います。

男女、年代関係なくおすすめの一作です。

ジビエグルメに変態博物館!で、何の話だっけ?笑  ー ゴールデンカムイ / 野田サトル

現代だからこそ出現した漫画って気がしますね。
しかし、この話のモチーフはどこから来ているのやら。

 

時代は19世紀初頭。舞台は日本、北海道。
アイヌが隠していた金塊を、運搬のスキをついて、その場にいたアイヌを皆殺しにして奪った男がいた。
男は捕まり収監されたが、その時金塊はすでに隠してしまっていた。このままでは金塊の在り処を、外の仲間に伝えることができない。男は囚人達に、暗号を施した入れ墨を入れて、集団脱走を促した。
脱走は成功し、北海道中に暗号の入れ墨が入った男たちが散らばった。金塊の在り処は、全ての暗号を集めないと分からない。そして、入れ墨はなんと皮を剥がすことを前提に彫られていた・・。
この話は金塊を巡る、囚人の皮(入れ墨人皮)の争奪戦の物語である。

 

発想からしてイカれてますよね。
さて、ストーリーは中々陰惨で人が死にまくる本作ですが、陰鬱な雰囲気にならない工夫が多数。ってゆーか、本作をグルメ漫画とか、ギャグ漫画とさえする声も笑。


ギャグはとてもシュールで、好みの分かれるところ。私はもちろん大好きです。
キャラが大体太めに描かれてる気がする。シュッとした人、あまりいませんね。

アクションの描写は秀逸。あまり書き込むタイプの作家さんではないのですが、頭の中に三次元の像が投影されてるんだろうなーって感じで動きが自由自在で無理がない。分かりやすい。ワンピとか、何してるか分からん時ありますもんね。

 

そして特筆すべきは、なんと言ってもグルメ描写でしょう!
北海道の四季折々の、ジビエグルメの描写が、あまりにも美味しそう!
なんかシライシが料理上手いし、皆のグルメリポートがやたらうまい笑。
シャケのルイペ(鮭の切り身を凍らせたもの)とかの郷土料理や、アイヌのオハウ(鍋料理)も美味しそうだけど、レプンカムイ(シャチ)のから揚げが一番旨そうだった!そのついでに揚げた、子持ち昆布も食感プチプチ、外はサクサク、中はジューシーで美味そうだったぜぇ、シライシィ笑!!自分で作れるかな・・(^^)


あとは登場人物が、なぜか軒並み猟奇的!まるで変態博物館!
囚人が多く登場するので致し方ない点もありますが、囚人でなくても変態だらけ。なぜ笑。
作者の意図は知りませんが魅力的?な登場人物達が、暗くなりがちな本作に(汚い)華を添えてます。

ってか全く暗くねえ笑。本筋を離れることは多いですが、ストーリーもしっかり骨太で、遅まきながら順調に推移してますよ。 

 

アニメ化もされましたね。悪くはないが、思い入れのある作品だけに、もっと気合い(金)を入れて欲しかった。アニメの注力度はオープニングで分かるようになってしまった。動きが少ないと、ガッカリしちゃう。でも、網走監獄突入変だけは、やたらクオリティが高かった気がする笑。

岳 / 片山修

本当に久しぶりにマンガを読んでショックを受けた。

たまに読みかじってて、面白いなあとは思っていたんですが、最後まで一気読みしたのは初めてです。

 

長野県を舞台とした登山と山岳救助の話なんですが、雄大な自然の描写が実に美しい。ほとんどが一話完結なので、取っつきもいいですね。ただ、最後2~3巻は必ず通しで読まなければならない。

 

クライマー達はハイキングから、冬山登山、ロッククライマーなど実に多様なので、ストーリーの性質も、クライミングレベルに左右されます笑。ほっこりしたものから、厳しいものまで。

 

ただ、救助をメインとしてるので、人はかなり死にまくります!!自分はハイキングはするので、本作を読んで行ってみたくなりますが、初心者は行く気がなくなるほど恐ろしい笑。死に方が、結構エグいんですよねえ。それだけリアルだってことだと思うけど。

 

本来であればかなりシリアスな感じになってしまう作品なのですが、主人公の三歩が底抜けに明るいので、毎度救われます。どんな人間とも分け隔てなく接して、一人で遭難者を助ける力と技量。そして山にテントで一人で住んで、お金はいつもない笑。

 

都会の生活に疲れた人が読むと、自分がちっぽけに思えます。だからといって、いきなり準備もせずに山に登らないでくださいね。都会の人がいきなり登山するエピソードでは、大概遭難して、三歩に助けられたり死んだりしてます笑。

 

魅力的なキャラクターが多数登場しますが、サブ?キャラでとても印象的なのが、小学生のナオタです。彼は父子家庭だったのですが、父親が山で事故死してしまうんですね。その父の救助を試み、死に際に立ち会い、ナオタが遺体に対面する時にいたのが三歩です。

とても悲しいエピソードだったのですが、その後祖父母の元に身を寄せたナオタを気にして、ちょくちょく三歩がお兄さん的な役割でナオタと会ったりするんですね。そのやり取りがとても温かく、物語の重要なスパイスになっています。

 

終盤は、マンガ史に残る衝撃的な展開。自分は未だに心に何かが突き刺さった感じがします。これは一言もネタばらしできないですね。ぜひぜひ、読んでみて欲しい。

 

 

惑星のさみだれ、は絵がちょっとね・・。高度なラノベって感じ?

10巻でまとまっていて、絵柄もシンプルで可愛く、とても読みやすい作品ですね。

各所で、“名作”とうたわれていたので読んでみました。

 

感想としては、「ストーリーは上手い。でも絵がなぁ・・・(^^;」といったところですか。

自分は絵の上手さや表現力に感嘆しながらマンガを読み進めていくのが好きなので、中途半端な画力のバトル漫画が苦手です。犬夜叉とかもね。でもめぞん一刻は最高。

 

ストーリーもすっきりとまとまっていて、きっちり計算されて最後に収束されていくし、名セリフやいい表現も随所のちりばめれれているのですが、どうにも熱量不足で、序盤はなかなか読み進めるのが苦痛でした。あと全ての伏線を綺麗に回収して終わるというのも、そこまで好きじゃないのです。伊坂幸太郎の小説みたいな。読んだ時は感心はするけど、あまり記憶に残らない。

 

最後の伏線回収やヒートアップ感も素晴らしいのですが、絵のせいでどうにも入り込めない。気持ちのいいラストなのに、〈なんか惜しい作品〉という感想になってしましまいました。絵柄付きの高度なラノベって感じか。色気もなにも感じない、パンチラも巨乳も正直いらない。

 

シンプルな絵で、ストーリーで読ませる作品としては、最近だと三部けい・「僕だけがいない街」が衝撃的でした。この作者がファンタジー作品を描いたらこんな感じになっちゃうんじゃないかなぁ。三部先生の「夢でみ見たあの子のために」もまだ序盤ながら、面白い臭いがプンプンします。

 

全然マンガの感想を書いてないですが(笑)、作品としては優れているとは思います!各所で感想が語られているので、そちらも参考にしていただければ(^.^)。