生きていたんだよな / あいみょん
何事も、予備情報なしだとインパクトが強いです。深夜のラジオから、植村花菜の“トイレの神様”が流れてきた時は、ちょっと感動しちゃいましたね。ただし、あの手の曲は何度も聴くものではない笑。まだ話題にもなっていなくて、深夜に自分だけ気付いて、独りかみ締める感じが良いのです。
それはそうと、久々に衝撃度が強い曲に出会いました。あいみょんの、“生きていたんだよな”。ラジオで別の曲を聴いて、興味を持ち、適当にダウンロードしてたら、たまたま自分のプレーヤーに滑り込んできた。電車で初めて聴いたら、鳥肌が立ちました。
自死をテーマにした、なかなか際どい曲なんですが、一見、自死を肯定しているように見えるのが、更にキワどい。死が、輝かしいばかりの自由への飛翔に感じられたり、とにかく“自殺はダメ”って言葉が一切ないんですよね。曲調もアップテンポで爽やかだし。
しかしよくよく聴くと、死んでしまった人に、ただただ寄り添ってあげているんです。死ぬ人は、周りのことなんか、目に入らないくらい追い詰められて、盲目になっていることを認め、最悪の手段を選ぶ、最後の瞬間まで頑張ったんだよねと、当事者を否定しない。山岳マンガの“岳”の主人公・三歩の遭難者への、「よく頑張った」を思い出した。
その寄り添う気持ちが、曲名の“生きていたんだよな”に、そのまま込められている。そしてサビでは、生きていたんだよなの“生きて”の部分だけが、リフレインされる。自死を、逃げともダメとも言わない。生きろとも言わない。でもこの“生きて”のリフレインの中に、本当は生きていて欲しかった、との想いが暗示されているのではないか(と、自分は勝手に感じた)。
歌い手は19歳の女性ですが、そのことに驚くというよりは、ここまで純粋な言葉は、この年代の子にしか、創りだせないのかとも思いました。一聴の価値はありかと思います。