ザ本ブログ

読書をメインに。他、雑記などをアップしていきます。

地球を抱いて眠る (小学館文庫) / 駒沢 敏器

今週のお題は「読書の秋」、ということなので以前から紹介したいと思っていた一冊。
著者は有名ではないが、美しい紀行文を書く。翻訳などもされているんですね。
本書は旅行記というよりかは、著者が旅先で得たスピリチュアルな体験集となっている。


印象的なエピソードをいくつか。

 

様々な自然の音を収集する専門集団に同行し、屋久島を訪れた著者。
夜も明けきらぬ真っ暗な山道を登っている最中に、ふと振り返ると見渡す限りの水平線が。日が差し掛かると、水平線全てが一気に色を帯び始める。それと共に、莫大な海原が姿を顕す。呼応するかのように一番鶏が鳴くと、辺りにおびただしいほどの自然の音が溢れ出した。
屋久島のガイドが、10年住んで初めての経験だったと涙ぐんでいたという。

 

屋久島からもう一つ。
500個もの南部鉄器の風鈴を、屋久島の木に吊るし、自然の風で鳴らそうというもの。
風鈴の音がと互いに共鳴し、音のうずの渦中にいる者は、得も言われぬ感覚に襲われ、思わず陶酔してしまったという。
どこかに音源はないですかね。というか、現地で自分で体験してみたい。

 

ハワイの石のお話。
これはちょっと恐怖体験じみています。
ハワイではマナという気の流れみたいな概念がありますが、それは石にも宿っていると考えられているそう。よって、目的もなく石を動かしたり、まして持って帰ろうとすると、現地の方はひどく怯えたり、きつく注意してくるという。
著者が、ハワイの自然環境センターの職員から聞いた話は、現実味があって薄気味が悪い。
ハワイの文化を知らずに、軽い気持ちで石を持ち帰った人が、世界中で不幸な目にあっているという。なぜそれが分かるかと問うと、実際起きた不幸な出来事を記した手紙と共に、毎年夥しい数の石がセンターに送られてくるのだと。センターの職員は、理解ができず怯えた様子だった。職員も現代にそのような呪いがあることを信じているわけではないが、現実にこうした便りがあるのを、どう受け止めたらいいのか分からないのだと。

 

この話には、後日談がある。
著者がハワイの取材から帰国ししばらくしたところ、玄関に石の置物があるのに気付いた。何気なく妻に聞いてみると、なんと別の機会にハワイを訪れた時に、記念に拾って帰ったのだという。著者は狼狽し、慌てて石をハワイに送り返した。不幸がまだ顕在化していないことに、一縷の望みを託して。

その後、二人は離婚するに至ったという。
それが石のせいかは分からない。ただ、そうした事実があったと言うことが語られ、本章は幕を閉じていた。

 

ここまでなら、まだ良かった。

 

ちょっと不思議で怖い話として読めたし、友人に話しても面白がられるくらいだった。
先日久しぶりに本著が読みたくなり、一読してやっぱり面白いなと思った。
ので、作者の他の著作にも興味が出て、ネットで買おうかと思うと、なんかやたらに高い。単行本なのに7,000円とか。
マイナーだけど、やっぱりコアなファンがいて入手しづらいのかなーと思って調べていると、どうも著者は既に亡くなっているらしい。
そんなに歳だったっけ?と思って調べると、驚愕の事実が判明した。
著者には行きつけのワインバーがあった。毎週のようにその店に通っていたのだが、ある時フツっと来なくなった。
店のマスターが心配していると、著者がしばらくぶりに来店したのだが、ひどく具合が悪そうだった。
本人曰く、原因不明の神経障害にかかり、身体が自由に動かせないのだという。
その日は、営業時間が過ぎても店にいて、ほとんど椅子から体を起こせなかった。
足を引きずるように、店を後にする姿を見たのが最後。

 

後日、メディアで小さく報道されていたのは、
50歳の著者の病気を悲観して、80歳の母が著者を絞殺し、そのまま行方不明になった。という記事。

 

怖すぎませんか。
ネットでは、これ以上の情報は何も出てきませんでした。
ちょっと不思議な話が、リアルのホラー体験になってしまったというオチ。

それだって、石のせいかなんて分からないけど。
皆さま、ハワイに行くときは、十分にご注意くださいませ。
ってかこんな目に遭うなら行きたくない(^^;笑。