限界集落株式会社 / 黒野伸一
村興しの話ですね。有川浩の『県庁おもてなし課』を思い出しました。あと池井戸潤の下町ロケットとか。
この手のお仕事小説は、何もないところから(いやポテンシャルはあるけど)村や会社が活気を取り戻すということで大体予想が付くのですが、分かってるのに途中で止められない笑。
ポイントとなるのは、どれだけ仕事現場をリアリティを持って緻密に書けるか。本作では主人公の優はアメリカで経営を学んだエリートだけども、やや情に欠ける人物。そんな彼が、いわば外圧によって高齢者が多数の限界集落を復興させていく。
当初は彼の活躍譚に終始するのかと思いきや、風光明媚で人情溢れる集落で過ごすうちに、彼の中の張り詰めた何かも変化していきます。優は東京で妻子がいたが、仕事にかまけて愛想を尽かされ出ていかれた。集落では、“野に放たれても、そこで自分で国を作れる人物”とも評される彼だが、その強さ故に他者への関心が薄かった。その強さと人情が、村での出会いによってミックスされていく様が、やきもきさせるが微笑ましい。
村には、他にも“ワケアリ”な人物が何人もいます。仕事を失ったり、何かから逃げてきたり。地域が再生するということは、“人間の再生”を促すのですね。不景気な時代には抗えない。でも自分の周りくらいなら、それぞれの力を活かすことで変えていけるとの自信をもたらしてくれる作品と感じました。